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【 スンバ島イカットについて 】

一枚の織物の中に、まるで絵画のように様々なモチーフが織り出されているスンバ島イカット。
そんなスンバ・イカットの中に繰り広げられるモチーフの多くには、様々な意味合いが込められています。
古来からのマラプ(精霊・祖霊)信仰に基づいたもの、古くからスンバ島に伝わる風習に基づいたもの、人々にとって身近な品や動植物はもちろん、インド・中国からの影響により生み出されたものや、オランダ統治時代の影響によるモチーフも数多くあります。
また、織り手独自の芸術性などによって、ユニークなモチーフが見られる場合もあります。
ここではスンバ・イカットの命とも言えるモチーフを代表的なものを例に、画像を添えてご紹介致します。


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【 スンバ島イカットのモチーフについて 】

◆ スンバ島に伝わる風習によるモチーフ

【首架文(スカル・ツリー/skull tree)】
20世紀初頭まで、スンバ島では部落間での戦いの際に首狩りを行う風習が残っていたそうです。
その狩られた首を飾っていたのがandungと呼ばれる首架です。
戦いでの勝利を祈願するために、古くからイカットのモチーフとして頻繁に織り込まれてきました。
謂れとしては少々恐ろしくもありますが、イカットに織り込まれた表情は反対に可愛らしくもあります。

約25年程前に作られたイカットに織り出された首架文です。
チャコペンがスンバ島で出回る前につくられたものは、図案なしに、全て織り手のイマジネーションによって括り、織り上げられたそうで、少々表情などにホンワリとした素朴さが漂います。
近年につくられたイカットの首架文で、下絵が描かれた後に括られ、くっきりとしたとした表情が生み出されます。
良い首架文の条件は・・・
 @鼻が堂々としていて、ドッシリ横に広めになっていること
 Aそれぞれの表情に可愛らしい笑顔が見られること
だそうです。

【パソラ(pasola)】
煌びやかな衣装の男性達が、様々に彩られた馬に乗って槍を投げあう勇壮な騎馬儀式(祭り)です。
槍の刃は、怪我をしないように細工されてはいますが、やはり勝負事ということもあり、あまりにも夢中になり過ぎて死傷者が出てしまう事もあるそうです。
年に一度行われます。



◆ 外来の影響によるモチーフ達

スンバ島のみならず、インドネシア各地でつくられる染織品には、インドや中国から伝播したモチーフが描かれていることもあります。
またオランダ統治時代を物語る西洋的なモチーフも存在し、インドネシアを取り巻いていたかつての状況が窺い知れます。

【獅子(ライオン)】
1602年に設立された東インド会社によるオランダ統治時代の名残が、この冠を被った獅子の文様となります。
かつてのオランダ王国の紋章の模倣で、獅子の頭上には、様々な形の冠が載せられていることが多く、オランダ王国の強い影響が垣間見られます。
その他にも、20世紀初頭に在位していたオランダ女王ウィルヘルミナが描かれたイカットや、キリスト教の影響下によるクリスマス・モチーフのイカットなども見られます。

【龍(ドラゴン)】
スンバ島イカットの中には、様々な形の龍(ドラゴン)が登場しますが、大きく分けて、足の描かれていないタイプと、左の写真のように4本足の描き出されたタイプとの二通りがあります。
この4本足の描かれたモチーフは、中国から伝来したモチーフと言われており、比較的近年になってから用いられ始めたとされています。

【パトラ(patola)】
パトラとは、インドのグジャラート州パタンにて織られる絹の経緯絣を指します。
17世紀頃からオランダ東インド会社の輸出品として東南アジアにもたらされ、その華麗な紋様は近世のインドネシアの染織に大きな影響を与えてきました。
その織柄の中の一つである華麗な花紋様はインドネシアのイカットの中に用いれられるようになり、古くは王侯貴族にのみ許された禁制モチーフとして、長く身分と権力の象徴と捉えられてきました。
また、このパトラ紋様はスンバ島のみならず、他地域の染織品の中にも見受けることが出来ます。



◆ イカットの中の動物達

具象的なモチーフが躍動するスンバ島のイカットの中には、様々な動物達が登場します。
その中でも頻繁に登場するモチーフをご紹介致します。


海老は脱皮を繰り返しながら、大きく成長していきます。
そんなことから、強い生命力の象徴とされ、生命の復活(再生)・不老長寿を表すモチーフとして、古来からスンバ島で好まれて織り続けられてきました。
鶏のモチーフは天上界の象徴として、この地の織物に頻繁に見受けられます。
馬のモチーフは富の象徴として、または王侯貴族にのみ許された特別な文様として表されていました。
スンバ島は「スンバ馬」と呼ばれる小型馬の名産地として知られています。
鹿 貴族階級が宗教儀式として鹿狩りをしていた為か、見受けられるモチーフの一つです。
勇敢さの象徴と考えられているそうです。


インド由来のモチーフと考えられます。
超能力があると信じられており、その為天上界と他界との仲介者として考えられています。
また、女性の守り神ともいわれており、脱皮をする姿から生命の復活(再生)の象徴とも考えられているそうです。
貴族階級に許されたモチーフの一つで、長寿や来世への願いを意味します。
人が最も恐れる動物であった事から、権力者や畏怖を象徴します。
また、水陸両生の能力から、2つの世界の調停も象徴します。
来世との関連があるとされます。


【 ヒンギー(hinggi)の構成について 】

ヒンギーとは、スンバ島で男性が着用するかなり大き目の一枚布で、腰布兼肩掛けとして使用されるイカットの呼称です。
このヒンギーにも伝統的な構成があり、布地の各場所によって意味するものがあります。
下の表は、ヒンギーの代表的な構成の一つを表したものです。

― ラ・パドゥア(王候・神) ―

中心部分の最も神聖な部分で、
パトラ文様などが描かれることが多い
― タラバ・ディダ(貴族) ―

支配者階級を象徴するモチーフ
が描かれる
― ハイ(平民) ―

首架文や海老などのモチーフが
描かれることが多い



― タラバ・ワワ(奴隷) ―

(注) もちろん各村によって、「マス目模様」や「等間隔の帯状ライン」が伝統的な構成となっている等の相違もありますので、上の構成はあくまで代表的な一例です。

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